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第79話 野球場の監督たち

Autor: 酔夫人
last update Fecha de publicación: 2026-06-23 11:00:52

「なんだその格好は」

実篤にそう言われて実花は目を瞬いた。

その台詞を今の実篤に言われるとは思わなかったからだ。

(お父様はチームユニフォームを着ているのに?)

濃淡が違うだけのグレーのスーツばかり着ている。

それが実花の中の実篤のイメージだった。

いまの実篤は色鮮やかだ。

胸元にはチームロゴ。

首にはタオル。

背中にはリュック。

しかも、そのリュックからは応援旗らしきものまで覗いていた。

「お父様……」

実花は思わず凝視した。

「その格好は一体……」

「私のことはいい」

即答だった。

だが全然よくない。

父親のリュック姿など初めて見た。

応援旗などなおさらだ。

どう見ても今日思いつきで買ったものではない。

「これは一昨年の期間限定ユニフォームだな」

「一昨年!?」

(つまり、

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  • 愛されること~夫と義妹に殺されたので、今世では悪女になります   第5話 ドレスを選ぶ(1)

    使用人が用意したドレスを、実花は静かに見下ろしていた。白に近い淡紫色。光の当たり方によってはほとんど白にも見えるその色は、藤宮家の「清楚な娘」であることを象徴するために選ばれたものだった。上品で、柔らかく、誰から見ても好印象を与える色。前世の実花はこの色を疑うこともなく、むしろ一ノ瀬恒一の好みに合うだろうと信じて、少し誇らしげに選んでいた記憶すらある。彼に選ばれるための自分を作ることに、何の疑問も抱いていなかった。だが今、その淡い紫はまったく違う意味を持って見えていた。それは「清楚」の象徴ではなく、「従順」の象徴だった。良い娘であること、良い妻になること、それらの言葉に守られているよう

  • 愛されること~夫と義妹に殺されたので、今世では悪女になります   第4話 やり直しの朝

    まぶしさで目が覚めた。実花は一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。瞼の裏に残る白い光の余韻がゆっくりと引いていき、代わりに柔らかい感触と静かな空気が意識へと染み込んでくる。身体を包んでいるのは上質なシーツで、布地は肌に吸い付くように滑らかだった。鼻腔を満たすのは、微かに甘く落ち着いた香り。高価な調度品に染みついたような、整えられた空間特有の匂いだ。ゆっくりと視線を巡らせると、そこは見慣れた―――けれど今の自分からは遠く感じる藤宮邸の一室だった。咄嗟に窓の外を見る。そこには、過剰なまでに手入れされた庭園が広がり、剪定された樹木と計算された配置の花々が、まるで絵画のような均整を保ってい

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    あの夜は、ただ変な声がして目が覚めただけだった。夢と現実の境目がまだ曖昧なまま、痛みでふらつく頭を押さえながら実花は一人で寝ていた寝室からゆっくりと廊下へ出た。冷えた床の感触が足裏に伝わるたび、意識が少しずつ現実へ引き戻されていった。声のする方へ向かったのは、意志というより反射に近かった。何が起きているのかを考える前に身体が勝手に動いていた。そして、すぐに分かった。何の声か。何の音か。理解してしまった瞬間、胸の奥が冷たく沈んだ。美鈴の甲高い声は快感を訴え、「もっと」と甘えるように揺れていた。それに応える恒一の唸り声は理性を削ぎ落とされた獣のようで、実花の知る“夫”という存在

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